四十肩と脊柱の関係
〜専門知識と整体的視点から〜
はじめに
四十肩(肩関節周囲炎)は肩そのものの問題と捉えられがちですが、実際には 脊柱(背骨)の状態と深く関わっている ことをご存じでしょうか。肩の可動性は単独で成立するものではなく、脊柱、特に頸椎や胸椎、さらに腰椎のバランスまで影響を受けています。
本記事では、四十肩と脊柱の関係について医学的な観点と整体的な視点をあわせて解説していきます。
四十肩(肩関節周囲炎)の基本
四十肩は肩関節まわりの炎症性疾患で、正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれます。特徴としては以下が挙げられます。
- 徐々に発症する肩の痛み
- 特に外旋・外転での可動域制限
- 夜間痛による睡眠障害
- 経過は急性期 → 慢性期 → 回復期と段階を追う
一般的には1〜2年で自然軽快することが多いとされますが、姿勢不良や脊柱の問題があると回復が遅れるケースがあります。
脊柱と肩関節の解剖学的関係
1. 肩関節の自由度と肩甲骨
肩関節は「自由度が高い」関節ですが、その安定性は肩甲骨と脊柱に大きく依存しています。肩甲骨は胸郭の上に乗っており、胸椎や肋骨の動きに影響されやすいのです。
2. 胸椎の役割
- **胸椎の伸展(胸を張る動き)**が不足すると、肩は上がりにくくなる
- 胸椎が猫背のように屈曲すると、肩甲骨が前方に倒れ「巻き肩」になりやすい
- その結果、肩の動きが制限され炎症が悪化
3. 頸椎の役割
- 頸椎から出る神経が肩や腕の感覚・運動を支配
- 頸椎のアライメント不良は肩の痛みやしびれを増強させる
4. 腰椎・骨盤の関与
- 骨盤の歪み → 脊柱全体のバランス崩壊 → 肩の高さが変化
- 腰椎の前弯不足は胸椎の後弯(猫背)を助長し、結果的に四十肩リスクを高める
四十肩と脊柱の関係を示す具体例
- 猫背姿勢と四十肩
長時間のデスクワークで胸椎が硬くなり、肩甲骨が前傾。肩の動きが制限されて炎症を誘発。 - ストレートネックと肩の痛み
頸椎の前弯が消失すると、僧帽筋や肩甲挙筋が緊張。肩関節への負荷が増大。 - 腰椎の不安定性と肩関節
腰椎すべり症や椎間板変性があると姿勢保持が困難になり、上半身の代償運動として肩が酷使されやすい。
整体的視点:脊柱から整えるアプローチ
整体では肩だけを施術するのではなく、脊柱全体のバランスを整えることで根本改善を目指します。
1. 胸椎の動きを改善する
- 背骨の柔軟性を高めることで肩甲骨の可動性が向上
- 肩関節の動きがスムーズになり炎症を軽減
2. 頸椎のアライメントを調整
- 神経の圧迫や筋緊張を和らげ、肩や腕への負担を減少
3. 骨盤・腰椎を整える
- 土台を安定させることで上半身の姿勢が改善
- 肩への負担を軽減
4. 全身の筋膜調整
- 肩だけでなく背中・胸・腕の筋膜を緩めて連動性を高める
自宅でできるセルフケア
胸椎ストレッチ
- 背もたれのある椅子に腰かけ、背もたれに胸を押し付けるように伸展
- 1日数回行うだけで胸椎の柔軟性が改善
タオルストレッチ
- タオルを両手で持ち、頭上に上げて背中を伸ばす
- 無理のない範囲で行う
姿勢習慣の改善
- デスクワークでは背筋を伸ばし、モニターの高さを目線に合わせる
- スマホを見るときはうつむきすぎない
まとめ
四十肩は肩関節の局所的な問題だけでなく、脊柱全体の姿勢・柔軟性・安定性が深く関与しています。
- 胸椎が硬いと肩が動かなくなる
- 頸椎の不良姿勢は神経・筋肉を緊張させる
- 骨盤・腰椎の歪みは肩の負担を増やす
整体院ではこれらを総合的に評価し、脊柱を含めた全身のアプローチを行うことで、四十肩の改善や再発予防に繋げることが可能です。